世界できっと、キミだけが
「あの、伊永さん」
「私の事は伊永、とお呼びください」
「…私の事だって結局紗千さんって呼んでくれないじゃないですか」
「仕事ですので」
むむ。強敵。
仕事だから。
そう言われたら私はなにも言えないもんな。
「それで、伊永さん」
私は、精一杯の抵抗としてそう呼ぶ。
「はい。なんでございましょう」
「えと、その、さちこお嬢様?ですっけ。その人と私、そんなに似ているんですか?」
気になっていて、それでも聞きそびれていたこと。
私が身代わりになっても大丈夫なほど、私たちって似ているのかしら。
こんなお金持ち大富豪の娘さんと似ているなんて。
境遇からすれば天と地ほど違うというのに。
「こちらが、幸子お嬢様です」
「…写真、持ってるんだ」
懐から差し出した手帳に挟んでいた写真を差し出す。
私はそれを受け取りまじまじと見つめた。