世界できっと、キミだけが


「ほら、あれが宇都木社長の弟」

「え…、あ。あの柱の側の?」

「ああ」



ふくよかで着ているスーツは少しきつそう。
ムスッと眉を寄せ、なんとなく意地の悪そうな人に見える。

兄弟の娘を殺そうとしている人なんだもん。
犯罪だよね。
なんで逮捕できないんだろう。

これまで捕まった犯人たちもだれの指示かはまだ黙秘しているらしい。
なんとも義理堅い犯人たち。
自分たちは捕まったというのに。

証拠がないと、捕まえることもできないのかな。




「あと1時間か…。気を引き締めねぇと」

「長いな…。頑張らなきゃ」



これまで、なんとか何事もなく過ごせている。
飲み物にも食べ物にも手を出していないし。
正直喉は乾いたけれど、背に腹は代えられない。



あと少し、頑張らなきゃ。



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