世界できっと、キミだけが
だが、事務所に吉沢はいなかった。
そこで俺は事務所に常時置いてある端末で紗千につけていたGPSの異常を知り急いで現場に向かったんだ。
あの後、吉沢に確認したが待っていたけど遅かったからとはぐらかされた。
だが、待っていて向かったにしては久住さんと吉沢の到着時間が合いすぎていた。
吉沢の話が本当なら、久住さんが到着してすぐに吉沢がつくのはおかしい。
俺はすぐに向かったし、俺がGPSの異変を聞いたのは事務所についてすぐだ。
事務所から現場は15分はかかる。
久住さんはもともとそう離れていないところで待機していたはずだ。
例え俺の待機場所に来ていなかったとしてもそう時差はなく現場には行けたはず。
不思議には思っていたけど、あまり深く追求しなかった。
どこかでそうであってほしくないと思っていたんだろうか。
「吉沢は、かなりの借金をしていたらしい」
「…動機は、借金ですか?」
「おそらく。宇都木社長の弟とはその借金の肩代わりという契約を交わしていたそうだからな」
金が人を変えていく。
この世界にいると、否応でもその様を目の当たりにする。
それは、吉沢だって同じだったはずだ。