世界できっと、キミだけが
「それとも、竜が怪我した時に手当てできるように看護師とか。なんて、動機が不純だよね」
「いいんじゃない?」
「え?」
思い付きでぽろっとこぼした言葉。
菜穂は名案だというようにそう言って頷いた。
「大切な人のためになりたい、誰かの助けになりたいって十分な夢の動機だと思うけど」
「で、でも。一個人対象だよ?それに、ただの片思いだし。実際私が手当てできる保証なんてないし」
あれから竜には会っていないし、もしかしたらこのまま会わないことだってあるわけだし。
それなのに、そんな動機で未来を決めてもいいのかな。
「でも、紗千にとっては十分な理由になるんじゃないの?もしかしたらそれで鹿島さんの側にいられるかもしれないでしょ」
「…そんなの、わからないけど」
「夢なんて、結局そんなもんだよ。そこまで大々的な理由なんてないって。きっかけなんて本当に些細なことだよ。私だってただ漠然と子どもが好きってだけで決めたようなものだし」