世界できっと、キミだけが
『大手グループ宇都木グループの創業者である宇都木達臣氏が昨夜、亡くなったとの情報が入ってきました』
テレビは朝のニュース番組を映し出していて、特別見ているわけではなかったけれどBGM程度に流している程度。
宇都木グループといったら、なんだっけ、ホテルやら旅行会社はたまた食料品と幅広い分野の会社を経営している親会社とか何とか…。
特に興味のない私でも、その程度の事は知っているくらいの大きな会社だ。
『宇都木グループは、後継者問題などで度々問題が上がってきていましたが、達臣氏の死去により一層その問題が浮き彫りになりそうです』
淡々と読み上げられるニュース。
後継者問題…か。
遺産とかもものすごい額なんだろうな。
私には、全く関係ないけど。
「紗千、帰り十分に気を付けるんだよ」
「え?ああ…うん。わかってるよ。どうしたの急に、神妙な顔しちゃって」
「いや…、なんでもない」
「お父さんこそ、また変な事に巻き込まれないようにしてよね」
「はは…、わかってるよ」
お父さんの視線はテレビに向かっていて。
何がそんなに気になるんだろう。
でも、そんな事を気にしている場合じゃなかった。
もう家を出なくちゃ。