世界できっと、キミだけが
「おじい様を亡くされて、さぞ寂しい思いをされている事でしょう。お辛いでしょうが、気を確かにもってくださいね」
「ありがとうございます。おじい様はとても偉大な方でしたから。こんなにも多くの方に送っていただけて、きっと喜んでいると思います」
土曜日。
私は精一杯幸子お嬢様のふりをして過ごす。
演技なんて、小学校の学芸会くらいでしかやったことがない。
寂しい想いなんて私はしていないし。
その幸子お嬢様自体を知らないのだから、本人がどう思っているかなんてわからない。
だから、精一杯当たり障りのないように答えていく。
「もう少し、しおらしくしろ。俯き加減で口元をハンカチででもおさえとけ」
後ろに控えている鹿島さんが小声で指摘してくる。
そんな事言ったってできるわけない。
だって、知らない人だし。
そりゃあ、亡くなったことは悲しいことだと思うけれど。
でも。
辺りを見渡してみても、泣いている人なんてどこにもいない。
お通夜もお葬式も終えている後だし、亡くなってから少し日にちが経っているからだろうか。
でも、なんだか雰囲気がおかしいの。