世界できっと、キミだけが


私というか、幸子お嬢様に声をかけてくる人だってそう。
本心でそう言っていないような。
私が、鹿島さんに考えてもらった定型文を読んでいるからこそ分かるのか、声をかけてくる人もなんだか決まった台詞を読んでいるみたい。


目が、なんだかギラギラしているというか。
なんだか落ち着かない。



「…喉乾いた」



ボソッとそう呟いて用意されているグラスを持つ。
口をつけようとした瞬間、後ろから手が伸びてきて私の手を掴んだ。



「な、なに」

「馬鹿。無闇に飲み食いするな」

「へ…?でも、喉乾いた」

「はぁ…」



鹿島さんは心底呆れたように溜息を吐くと、私がもっていたグラスを奪い一口飲む。
ちょ、ちょっと何して…。
そう思った後、すぐに鹿島さんはそのグラスを私に返した。


「は…?」

「飲んでいい」

「飲んでいいって、鹿島さんの飲んだ後とかいらないし」



喉乾いたなら自分で取ってよ。




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