世界できっと、キミだけが
「紗千、おはよー」
「あ、菜穂おはよう」
学校の靴箱のところで親友の押切菜穂(おしきりなほ)と出会う。
ショートボブがよく似合う明るくはつらつとした子だ。
菜穂に憧れて髪を短くしようともくろんだ時もあったくらい。
それでも、菜穂だから似合うんだって気づいてからは、胸のところくらいまでのロングヘアを維持している。
150㎝で小さくて小柄で可愛い菜穂に対して、私は160㎝。
菜穂と並ぶと10㎝も差があって目立つのだ。
「紗千、勉強してる?」
「…それを私に聞く?」
「それもそっか」
勉強が大の苦手。
特に数学が大大大嫌い。
数学なんてものがどうしてこの世に存在するのか意味が解らないほど。
それでももうすぐ1学期の中間テストがやってくる。
否応でも勉強をしなくちゃいけないんだ。
「よお!」
「浩太、おはよー」
「おはよう」
教室の前で次に出会ったのは、男友達の平手浩太(ひらてこうた)。
愛すべきバカ、と呼ぶにふさわしい男。