世界できっと、キミだけが
悔しそうな父親の顔。
「金なんて必要ない。今すぐにでも紗千を返してくれ」
俺に訴えてくる。
その悲痛な声にどうしようもなく胸が痛くなる。
最低だ。
俺はなにも知らず、上部だけの情報であいつのことも父親のことも決めつけて。
「すみません。…俺たちも宇都木社長に雇われている身なので…」
「…いや、すまない。みっともない事を君にいうべきじゃなかったね」
「いえ…。俺の方こそ、失礼な事を聞いてしまってすみませんでした」
俺は深々と頭を下げた。
プロとして情けない。
「一度戻って必要なものを取ってくるよ」
「はい。すみませんでした」
「君もあまり気にしすぎないように」
「いえ、俺のせいなので…」
もっと責めてくれてもいいくらいだ。