世界できっと、キミだけが
「幸子お嬢様は、無事だったの?」
「は?…あ、ああ。犯人はお前を突き飛ばした後すぐ逃走した」
「そう…。なら、よかったね。みんなの大切なお嬢様が護られて」
深い溝ができてしまったのだと。
不信感。
護衛対象者とは一番大切な信頼関係。
自分の一瞬の判断で簡単に崩れ落ちていくのだと。
一度できたその溝は簡単には埋められないこともわかっていたはずなのに。
「もう俺のこと、信用出来ないかもしれない。でも、もう一度俺にお前を護らせてほしい」
「…別に、鹿島さんのこと責めるつもりない。だから、そんな無理しなくていいよ」
「無理なんてしてない。もう一度チャンスが欲しい」
自分の不甲斐なさ、未熟さを痛感した。
先入観や思い込みで俺は取り返しのつかないことを。
ちゃんと自分の仕事を見直したい。
プロとしてしっかり小野田紗千と向き合いたい。
そう願った。