ウルフの恋に溺れて。
「ひなの?元気出しなよー。」
学校についてすぐ、教室の机に伏せていた私に声をかけてくれたのは、たった1人の大親友、大原桜だった。
「無理だよ…だって1年半だよ?簡単に忘れられるわけないよ…」
今まで陸と遊びに行ったときのことを思い出すと、涙が止まらなくなる。
「佐々木…。」
唐突に名前を呼ばれて、振り返る。
「これ、課題のノート。」
「あ、うん、ありがとう。」
手元には、数学のノートがあった。
数学係の私が集めなければならないものだ。
そこには、お世辞にも綺麗とは言えないが、男の子らしい力強い字で…
『真田凛音』と書いてあった。
「さな…だ…り…おん?」
めずらしい名前だな、とノートを眺めていると、桜が口を開いた。