ウルフの恋に溺れて。
「おはよーっす。」

桜と話し込んでいたら、教室のドアが開いた。




陸だ。教室の前まで奈々ちゃんと登校してきたのだろう、窓の向こうに、隣のクラスへ歩いていく奈々ちゃんの姿が見えた。




「朝からラブラブじゃん陸ー!」


クラスの男子が茶化す。



私は、涙がこぼれ落ちそうで、必死に唇を食いしばって我慢した。






「…ひなの。」

桜が心配そうな顔で、声をかけてきた。



「だ、大丈夫!わかりきってたことだもん、しょうがないよね!」


私は作り笑顔を作って、元気にふるまった。





そう、わかりきってたこと。

前からずっと思ってるからって、叶うわけじゃない。選ぶのは陸なんだもん。





「ちょっと、トイレ行ってくるね!」


私は走ってトイレに向かった。


止まれ、涙止まれ。なんど心の中で叫んでも、あふれだして止まらない。
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