ウルフの恋に溺れて。
「…ばかじゃないの。」
…え?いま、真田くんの声?
私はまだ止まっていない涙をそのままにして、上を見上げた。
「1人の男にすがって、涙なんてながして。悲劇のヒロインのつもり?」
…私は言葉が出なかった。
悲劇のヒロイン、たしかにその通りだ。
私、なにやってたんだろう。
「そう…だよね。なにやってるんだろうね。私。」
真田くんは、私を置いて、そのまま教室のほうへ歩いて行った。
いつの間にか止まっていた涙が乾いて、冷えた皮膚が、やけに寂しく感じた。