現役女子高生、メイドになります!
その一言は、俺にとってかなりこたえたんだよね。結局、兄貴としてのプライドだったんだろうけど。



『跡取り』って言葉の意味を、はっきりとわかっていたわけじゃないのに、弟の風には奪われたくなかったって思いがあったんだ。



俺らが大人になったころ、サクラグループの社長が風になってしまったら、兄としてかなりみじめだなって思った。




「父さん、オレ、どうすればいいの?」


「まずは、一家の長男らしく振る舞いなさい。弟妹達にとって、尊敬できる兄になりなさい」




……父さんも、今はだいぶ丸くなったけど、あの頃は、じいちゃんが亡くなったこともあって、相当ピリピリしていた時期だったのかもね。



とにかく俺は、立派な兄ちゃんになれるように頑張ったさ。ふざけるのもやめて、風たちの面倒を一生懸命見たよ。



家には信子さんや当時のパートさんがいたけれど、両親は常に仕事で忙しくしているから、俺がこいつらの親代わりにならないとって思ったんだ。



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