常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
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「……で、顧客とは連絡が取れてるのか?山田」

上條課長が渋い顔で確認した。

いつもなら後場が引けた今は、営業部長と一課の課長である水島との会議なのだが、今日はさすがに、やらかしてしまった山田についてやらねばならない。

……仕方ない。部下の不始末は、上司であるおれの責任だ。

「は、はい……家電(いえでん)に留守電を入れたら、向こうから『よろしくお願いします』って連絡がありました」

山田がおずおずと答える。

「向こうがそんな殊勝な態度になるとはな。メインの連絡先のケータイは着拒否だったんだろ?
……なんてメッセージを入れたんだ?」

不思議に思って課長が訊く。てっきり、顧客とは音信不通だと思っていた。

「えーっと、『いろいろ方法がありますから、一緒に考えましょう』って入れました」

山田が文言を思い出しながら答える。

「……それ、おまえが考えたのか?」

山田が追証を出したのは初めてだ。ベテランでもパニックになるというのに、そんな冷静な判断ができるとは?

……もしかして山田、やればできる子、なのか?

「いやいやいや、大奥の『あの人』に教えてもらったんですよ」

山田は目の前で手のひらをぶんぶん振る。

「大奥の『あの人』?」

課長が(いぶか)しげな目で山田を見る。

「あれ、課長、知らないんっすか?『あの人』は本社でいた時『大奥の影の総元締め』って言われてたらしいっすよ」

山田は課長が知らなさそうだったので、早速調子に乗り始めた。ちなみにすべて、同期の田中 望からの受け売りである。

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