常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「……大奥、か」

苦り切った声で大地が呟く。

彼にとって「大奥」とは、古き伝統文化ならぬ悪しき「伝票文化」を(かたく)なに守り続ける権化のごとき存在である。
因習に凝り固まった「奥女中」たちの改革なくして、このあさひ証券に「維新」は来ない。

これから対峙するのが、その「影の総元締め」と呼ばれる者か、と思うと大地は気が重かった。

「あ、大丈夫っすよー『あの人』は。課長が思ってるような人じゃないんで」

山田はお気楽に言った。

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