常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「小田、その『田中あづさ』を必ず参加させたコンパをやるからな」
大地は「今日の社食は日替わりA定食にするからな」と同じ口調で言った。
「どうしたんっすか⁉︎」
小田はサラリーマン界の掟を破って叫んでいた。
「課長は、前にバツイチの部長が企てた、イケメンを囮にした作戦の『業務命令』コンパですら拒否ってたじゃないっすかー!」
大地は小田のムンクのような叫びを無視した。
「三対三がいいな。人数多いとめんどくさいし」
「……もしかして、課長、どっかで見かけた田中あづさを見初めた、とか?」
小田が大地をおずおずと見る。
「おれに見初められるほど、『田中あづさ』ってヤツは美人なのか?」
「はぁっ⁉︎……課長、田中あづさを見たことないんすか?」
「見たことねえよ。……じゃ、セッティングと声かけ、よろしくな」
呆然とする小田を尻目に、大地は端末の電源を入れた。
まもなく午後の株価取引が開く。