常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
亜湖は大地の胸にこつん、と頭を預けた。
「どうしたんだ、なにがあったんだ?」
大地は亜湖をしっかり抱きとめて、彼女の髪を撫でながら、やさしい声で尋ねる。
泣く女なんて、今までは面倒くさい以外、何物でもなかったのに……こうして抱きしめさせてくれるのなら、いくらでも泣いていていい。
初めて亜湖に会ったとき、彼女はフロア全体を威嚇するほどの強いオーラを放っていた。
なのに今、腕の中にいる亜湖は、生まれたての小鳥のように頼りなくて儚げだ。
とても同一人物とは思えない。
だが、どちらの亜湖も好きだ。
どちらの亜湖も……ほしい。