常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

大地は身体(からだ)を離して亜湖を見つめた。

そして、顔を近づけていって、彼女のくちびるを、再び捕らえた。

ちゅっ…ちゅっ…ちゅっ…と軽く(ついば)んでから、くちびるを押しつけて、亜湖のやわらかなくちびるをしっかりと味わった。

くちびるが離れたあと、

「やっぱり……ずるい」

亜湖は上目遣いでつぶやいた。

先刻(さっき)も言ってたけど、なにが『ずるい』んだ?」

大地は亜湖のくちびるを親指でなぞりながら、甘く(ささや)く。だが、彼女はなにも答えなかった。

「亜湖?」

大地が亜湖の瞳を覗き込む。

「亜湖、言ってくれ」

大地が彼女の耳元で、焦れた声で急かす。

……この声に弱いから。
だから、会いたくなかったのだ。

この声を耳元で聴いたら、決心が鈍って、ぐずぐずになるのは目に見えていた。

……でも、わたしも、あなたに逢いたかったから。

とうとう、亜湖は意を決した。

「あなたは……わたしが常務の娘だから、近づいたんでしょう?」

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