常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
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大地はもともと烏の行水にもかかわらず、さらに速攻でバスルームから出たはずだった。
ところが、リビングのカウチソファでは、すでに亜湖がこときれたように眠っていた。

「……マジかよぉ」

営業二課の部下たちから「悪魔」と陰で呼ばれる「上條課長」が、世にも情けない声でつぶやく。

まるでタツノオトシゴのように(うず)くまって寝息を立てる亜湖を、やりきれない思いで大地は見つめる。

亜湖がメイクをしっかり落としてすっぴんだったので、ちょっとホッとした。帰るつもりだったのなら、メイクは落とさないはずだろうから。

大地は亜湖のそばでしゃがんで、立て膝をついた。

「……なぁ、起きろよ……亜湖」

彼女の真っ白な肌理(きめ)の細かい肌に、そっと手を伸ばす。

「だいたい、一人で一升瓶空けるし、呑み会で食ったからってほとんどつまみも食わねえし、いくら酒に強くっても回るさ……眠たくもなるよ」

大地の右手が、亜湖の少女のようにふっくらしてハリのある頬を包み込む。

別に化粧が濃い、というわけではないが、アイメイクのない亜湖はいつも以上に童顔だった。
眠っているということもあるのか、子どもそのものの「あどけなさ」である。

……あれ、この顔、昔、どこかで見たような。

大地は顔を近づけて、亜湖の目鼻立ちをじっくりと見た。


……まさか……「市松人形」!?

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