常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
そのまま、大地のくちびるが亜湖の首筋へと下りていく。時折、ちくっ、と痛みが走る。
「……イヤなの」
思い切って、亜湖がむくっとベッドから半身を起こした。
「怖いのか?……大丈夫だから……おれに任せろ」
大地が亜湖を腕の中にすっぽり包んだ。
そして、啄むようなキスを何回もする。
「違うの」
キスの合間に、亜湖は必死で言った。
「このベッドがイヤなの」
「……へっ!?」
大地が素っ頓狂な顔になる。
「寝心地が悪いのか?
……『日本ベッド』なんだけどな。星野リゾートでも使ってるマットレスだぞ?」
「……そんなことじゃないの」
ベッドはキングサイズで広々としている。マットレスはホールド感が絶妙で、寝心地はものすごくいい。きっと最高級品なんだろう。
「この部屋がイヤなの!」
……なんか、駄々をこねる子どもみたいに言ってしまった。
「ホテルの方がよかったのか?
……でも、酒を呑んだから車も出せないし。
だいたい、もうこんな時間だから、ちゃんとしたホテルはチェックインできないぞ」
思ったとおり、亜湖の髪を撫でて機嫌を直してもらおうとしている。
「違うの!」
「だから、なにが違うんだ?
……言ってくれないとわからない」
真剣な顔で見つめる大地から、亜湖は目を逸らした。
「亜湖……なにが気に入らないんだ?」
大地は手のひらで亜湖の頬を包み、自分の方に向けた。
「……ほかの女の人も来てるでしょ?」
消え入るほど、小さな声だった。