常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「……はぁ!?」

大地は腕の中の亜湖をまじまじと見た。

「来たことない」

「うそ」

亜湖は間髪入れずに言った。

「うそじゃない。おれは、女をうちには入れない」

「絶対、うそ」

亜湖の表情の(うかが)えない日本人形のような瞳が、ひたすら怖い。

「うそじゃない。それこそホテルに行ったり、向こうの家に行ったりしてた。自分のうちに入れたら、いつの間にか相手の私物が増えるだろ?別れるとき、面倒なことになったことがあるから、それ以来入れないようにした」

こんなことを話したら、火に油を注ぐようなものだとは思ったが、大地は正直に言った。

「だから、亜湖、おまえをここに入れた意味、わかるだろ?おれは、おまえを……」

大地の言葉を亜湖は遮った。

「今まで、彼女をとっかえひっかえしてたんでしょ?」

亜湖の声は氷のように冷たかった。

「だれがそんなことを言ったんだ!?」

大地は亜湖の両肩を掴んだ。
亜湖は顔を背ける。

「慶人か!?」

亜湖は顔を背けたままだ。

……あの野郎、ブッ殺す!!
今度、慶人に会ったときがヤツの命日だ。
蓉子にはかわいそうだが、結婚する前に未亡人確定だ。


「……篠原さんも……入れてないの?」

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