常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「なんで……珠紀のことを……」
大地の目が見開かれた。
「……『珠紀』って呼んでたんだ」
亜湖が声にならない声で、つぶやいた。
「いや……亜湖……それは……」
急に大地の落ち着きがなくなった。
「……会社のために、別れたんですよね?」
亜湖は大地をまっすぐに見て訊いた。
「篠原さんは専務秘書です。あなたのお父さまが見込んだ方じゃないんですか?」
「亜湖、ちょっと待て……おれの話を聞いてくれ」
「篠原さんと、本当に別れる必要があったんですか?」
亜湖は仕事モードの「大奥の総元締め」に入ったかのように詰めていく。
「もう、彼女は大阪で結婚してる」
大地はかろうじて返した。
「だから……わたし、ですか?」
亜湖の声が震えた。
「常務の娘で……大奥の総元締めで……仕事に使えるから……会社のためになるから……」