常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
焼肉屋を出たあと、大地は突然、小さな公園に面した路肩にすーっと寄ってM4クーペを停車させた。すぐさまシートベルトを外す。
どうしたの?という顔で、亜湖が彼を見る。
「……今日、最後のキスだ」
そう言って、大地は亜湖に覆いかぶさるように身を伸ばし、彼女に啄むキスを何度もした。亜湖も彼の首の後ろに手を回し、そのキスに応えて、大地のくちびるをきゅっ、と甘噛みする。
堪らず彼は、亜湖のふわりと開いたくちびるの向こうへ、舌を滑らせていく。
「ぅん……っ」
亜湖のくちびるから、甘い吐息が漏れる。
大地は亜湖の口の中で彼女の舌を捉え、ねっとりと絡ませていく。
カーオーディオからは、エルトン・ジョンの♪Your Songが流れていた。
「……きりがないな」
甘く焦れた声で、大地がつぶやく。
昨夜から昼過ぎまで、なにも身に着けてなかったときの間の方が多いくらい、見境なく肌を重ねたはずなのに、まだ足りない。
もっともっと……互いがほしい。
文字通り、断腸の思いで大地は亜湖からくちびるを離した。
そして、もう一度シートベルトを締め、手慣れた操作でマニュアルのM4クーペを発進させた。