常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「経営企画本部長になってアンテナショップでの成果が出ましたら、いよいよこの改革案を全国規模で実施したいのです」

上條課長は常務の顔から目を離さない。
ものすごい目力で彼を見ている。

「そうなると、経営企画本部長の権限では難しいと思います。なので、今度は取締役の中でも上位の副社長の権限が必要になってきます」

副社長のポストは現在空位になっているが、あさひ証券では会長・社長に次ぐ、会社を代表する役職だ。二ヶ月前の役員会議で、ゆくゆくは「御曹司」の二人……上條 大地か水島 慶人のどちらかに、就かせることが決まったポストだった。

……次代のあさひ証券を背負って立つ候補はもう決められている。そしてそれは、今の取締役たちではない。水島か上條だ。

……水島が周りの反対を押し切って、上條のような大胆で即効性のある改革をやれるとは思えんしな。

……上條を先発にして改革を断行させておいて、落ち着いた頃に水島に継投させるっていうのが、会社にとっては妥当な選択か。


「おとうさん、お願い……会社のために、力になって。早く手を打たないと、現在の流れにどんどん置いていかれるっていうのは、おとうさんも感じているでしょう?」

亜湖も頭を下げる。

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