常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「まさか、また慶人に丸投げする気じゃないだろうな?」

……『また慶人に丸投げする』?

大地はきょとんとした顔になる。

「高校で生徒会長をしたとき、おれはおまえに次の生徒会長を引き継がせて『学園改革』をさらに押し進めたかったんだ。実践力はおれよりも慶人よりも、おまえの方があるからな。
……なのに、おまえは立候補もせずに慶人に譲っただろ?」

諒志はなぜか、イライラした顔で大地を睨んでいる。

「それは、サッカー部のキャプテンとかけ持ちするわけにはいかなくて……」

とまどいながら大地が言うと、

「慶人だって、テニス部のキャプテンだっただろうがっ。ちなみに、おれもバスケ部のキャプテンとかけ持ちしてたぜ」

被せるように、諒志が返す。

「……おまえはツメが甘いんだよ」

諒志が深いため息とともに吐く。
ミルクと砂糖の入ったコーヒーをスプーンでくるん、とかき混ぜた。

……それは、元カノにも、今カノにも、言われましたが。

大地はぬるくなったブラックのコーヒーを、ごくっ、と飲んだ。

「改革ってのは『ハイやりました!』で、終わりじゃないんだ。終わったと思っても、しばらく『経過観察』しないといけないんだ。 そこで『微調整』が必要になってくることもある。
……だから、途中で放り出すな」

諒志は冷めてしまったコーヒーを口にして、顔を(しか)める。

「なのに、おまえは、さっさとズラかろうとしやがって。今度もまた、慶人に社長の座を譲って、一人汚れ役をやった気になって、悦に入る気だろ?……違うか?」

大地は呆然と苦笑いを浮かべるしかない。

「おれの妹を副社長夫人で終わらせるなよ?」

諒志は大地を鋭い目で一瞥した。


「そこまでのことをやる覚悟があるんだったら、
……亜湖を社長夫人にしてくれ」

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