常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
Epilogue
「……はぁ……っ……」
田中常務邸を出て愛車に戻った大地は、BMWのM4クーペのハンドルに突っ伏した。
「緊張した?」
右の助手席で亜湖がくすくす笑う。
「……なんとか、うまく行ってよかった」
大地が頭を上げて、ようやく手に入れた亜湖を見つめる。
「亜湖、おれは来年四月の辞令で部長職で異動する本社には『妻帯者』として戻りたいと思ってる」
亜湖を早く妻にしたいのはもちろんだが、部長としてはかなり年齢が若い分、結婚してプライベートが落ち着いたところを見せて、少しでも多く社会的信用を得ておきたいのだ。
また、「御曹司」を狙う玉の輿願望の女子社員を追っ払えるので一石二鳥だ。
「……うん、そうだね……わたしの誕生日、二月の末だから、大地の奥さんとして迎えられたら、うれしいな」
亜湖はそう言って頬を染めた。
三月は異動の引き継ぎで忙しくなるから、ちょうどいいときかもしれない。
「じゃあ、その日あたりに式を挙げるのがベストだな。入籍だけでも絶対するぞ」
大地はなんとしても実現させることを決意した。
「これから、どこへ行きたい?どこへでも連れてってやる」
これから夜まで、亜湖とのデートだ。
……婚約指輪でも見に行ってみようか。