常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「……スーパーに行きたい」

亜湖はにっこり笑って答えた。

「ス…スーパーぁ!?」

大地は素っ頓狂な声になる。

「大地、食生活がひどいでしょ?一週間分は無理だけど、二、三日分でも常備菜をつくって、冷蔵庫に入れておきたいの」

亜湖の目は、大地の健康が心配だから真剣だ。

……そんなのつくってたら、おまえとイチャつく時間がなくなるじゃないか。明日から次の週末まで「お預け」になるんだぞっ。

「大地のタワーマンションって、近くにスーパーあるの?」

都心はコンビニはあちこちにあるが、スーパーは郊外まで行かないとないという場合が多いのだ。いざ暮らすとなると、かなり不便だ。

だから、マンションを購入する際には考慮した。一人暮らしの自分はあまり利用しなくても、売却したいと思ったときに有利になると考えたからだ。まさか、こんなに早く役立つとは思わなかったが。

「あるにはあるさ。新川の方にファミリー向けのタワマンが結構建ったからな」

ちょっと、ぶっきらぼうな言い方になる。
それでも、愛する亜湖のため、大地はシフトチェンジして、M4クーペをスーパーへ向けて発信させた。

< 254 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop