常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「……スーパーに行きたい」
亜湖はにっこり笑って答えた。
「ス…スーパーぁ!?」
大地は素っ頓狂な声になる。
「大地、食生活がひどいでしょ?一週間分は無理だけど、二、三日分でも常備菜をつくって、冷蔵庫に入れておきたいの」
亜湖の目は、大地の健康が心配だから真剣だ。
……そんなのつくってたら、おまえとイチャつく時間がなくなるじゃないか。明日から次の週末まで「お預け」になるんだぞっ。
「大地のタワーマンションって、近くにスーパーあるの?」
都心はコンビニはあちこちにあるが、スーパーは郊外まで行かないとないという場合が多いのだ。いざ暮らすとなると、かなり不便だ。
だから、マンションを購入する際には考慮した。一人暮らしの自分はあまり利用しなくても、売却したいと思ったときに有利になると考えたからだ。まさか、こんなに早く役立つとは思わなかったが。
「あるにはあるさ。新川の方にファミリー向けのタワマンが結構建ったからな」
ちょっと、ぶっきらぼうな言い方になる。
それでも、愛する亜湖のため、大地はシフトチェンジして、M4クーペをスーパーへ向けて発信させた。