常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「ええっ!? 」

今度は亜湖が素っ頓狂な声を上げる。

「なんでもっと早くに言ってくれなかったのっ!
プレゼント用意してないし、ケーキだってっ!?」

亜湖は泣きそうな顔で、大地に抗議する。

「ケーキは先刻(さっき)、食っただろう?甘ったるいのは一日一個でいいよ。それから、誕生日プレゼントは……」

大地は亜湖の潤んだ瞳をじっと見つめた。

「……もう、もらったから」

そして、亜湖のくちびるに自分のくちびるを重ねた。

ついばむような軽やかなキスから……
互いのくちびるを舌でなぞるようになり……
やがて、口のなかで互いの舌を溶けるみたいに絡め合わせて……濃厚なくちづけに変わっていく。

くちびるを離した亜湖が首を(かし)げて尋ねる。

「……それって、わたしってこと?」

大地が片方の口の端を上げて、いじわるっぽく笑う。

「……それも、ある」

そして、亜湖に……


常務の娘の「田中さん」に向かって言った。



「今日、おれの誕生日のこの日に、
これからのおまえの人生を、全部もらった」











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「常務の愛娘の『田中さん』を探せ!」〈 完 〉
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