常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
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二人は総務課を出て、同じフロアにある社員食堂に向かっていた。

これから、つかの間の昼休憩に入る。
二人とも外から見れば余裕で仕事しているように見られるが、やはり激務の証券マンである。

いくら前日接待で呑み明かしていても、毎朝五時には起床して、日経新聞やテレ東系BSでやっている「金の亡者」向けのニュース番組をしっかりチェックし、六時過ぎには出社している。
だから、大地だけではなく水島も、会社近くのマンションで一人暮らしだ。

管理職の会議で営業部長などからのムシのいい営業目標をなんとか下方修正したのち、朝会では今日のノルマ達成のために、課内の部下たちにMAXで怒鳴り散らしている。

そうこうしているうちに前場開始。怒涛の営業活動。大地や水島クラスになると、端末の情報をガン見しながらも千手観音のようにいろんな電話に手を伸ばしている。

前場が引けて後場が開くまでの今が(それも顧客の急な都合で潰れることが多いのだが)とりあえず一息入れられる時間なのである。

彼ら営業社員に関して言えば、「セブンイレブン」ではなく「シックストゥエルブ」だった。

「……どうやら、また空振りのようだねぇ」

水島が肩を(すく)める。

「もし常務の娘だったら、わかるのかよ?」

大地が(いぶか)しげに訊く。

「さあ、どうかな……」

水島がニヤリと笑う。

「ビルマ、おれが見つけたあとをついてくんなよなっ」

大地がぎろっ、と睨む。

「……その呼び方、やめろ」

水島が低い声で唸る。

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