常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
社食の入り口をくぐるとき、大地は決意した。
もし、水島が「日替わりA定食」を選んだら、
自分は絶対に「日替わりB定食」にすることを。
もし、水島が「日替わりB定食」を選んだら、
自分は絶対に「日替わりA定食」にすることを。
水島は典型的な「隣の芝生が良く見える」タイプだから、きっと、そっちにすればよかった、と後悔することだろう。
昼飯にはこだわりはない。
もともと食べるのは早かったが、証券マンになってさらに磨きがかかった。水島も同じだ。
今日は昼飯を食えるだけでもよかった、と思わなければやっていけない。
総務課から社食への最短距離は、隣の島の人事課を通って行くルートである。
ところが、二人とも、なぜか、当然のように、わざわざ総務課の裏を回って社食を目指した。
まるで……人事課を避けているかのように。
だから、二人がとったルートは、社食への「最長距離」だった。