常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

とはいえ、相手は一介の課長ではなく、社長の息子なのだ。バックレるわけにはいかない。

「田中」という、どこの支店にも何人かはいるようなありふれた名前だったから、今までバレずに過ごしてきたけれど、そろそろ潮時だったのかもしれない。

……「田中さん」は腹を決めた。

「はい、そうですが……なにか?」

ちょっと、警戒した声になる。
眉間にも(かす)かにシワがよる。

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