常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
項垂れた山田が、力なく首を左右に振る。
「家電は留守電になってますし、ケータイは着拒否されてます……」
「そう。そのこと、課長には報告した?」
山田がまた首を左右に振った。身体が小刻みに震えている。
「このまま入金がない場合は、追証発生日から翌々営業日を過ぎると、うちの課での手続きに入りますから、そちらの課長に言っておいてください」
「あの人」は、これは入金はないな、と判断した。
「山田くん、お客様のお宅の留守番電話に『方法はいろいろありますから、一緒に考えましょう』ってメッセージを入れておくといいわ。あなたよりもずっと不安なのは、お客様なのよ」
そう告げて、「あの人」は営業二課をあとにした。帰り際、山田に寄り添うようにいた田中 望に、彼女がふっ、と微笑んだ。
「ありがとう!」
田中 望は彼女に、にこっと笑って言った。