常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
田中 望は自分が田中常務の甥であることを、新人研修中から包み隠さず公言していたので、同期の間では周知の事実だった。
あの用意周到な田中常務であっても、綻びがあった。天真爛漫な甥っ子が、社内での居心地をより良くするため、伯父の肩書きをフル活用していることを見逃していた。
口止めするのを……すっかり忘れていたのだ。
「そういえば、この前うちの水島課長にも言ったんだけどさ。あの冷静沈着な『王子さま』の課長が、飲んでたユニマットのミルク入りコーヒーを噴き出すほどびっくりしてたなぁー」
田中 望は能天気に笑った。