常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「小会議室A」には大地だけがいた。
田中 沙恵子がおずおずと入っていく。
「あのう……先日は……」
「大丈夫だったか?かなり呑んでたようだけど」
大地が机の上に広げた書類から目を上げずに言った。
「次の日はひどい二日酔いだっただろ?」
田中 沙恵子は、その翌日ものすごーく頭が痛くなり、吐き気もなかなか治まらず、せっかくの土曜日の休みに、一日中ベッドから離れられなかった。
「冷酒には気をつけろよ。翌日に残るからな」
「調子に乗って、日本酒を水のようにどんどん呑んでしまったのが、間違いでした」
田中 沙恵子は頭を下げた。
「おれとは間違いを起こさずに済んで、よかったじゃないか」
大地は顔を上げて、屈託のない少年のように笑った。