常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「……とにかく、おまえらは来年以降、丸の内でしばらく部長をやって、然るべき時期が来たら……」

専務はまっすぐに、大地を見据えた。

「おまえか、慶人のどちらかに『副社長』を任せる、という社としての方針が決まった」

どうだ?次期社長ポストだぞ、と顔を見られたが、大地はなにも答えず、冷めかけたコーヒーをブラックのまま、ごくっ、と一口飲んだ。

「ま、おれは会社の未来のことだけが気がかりなんで、上手く経営してくれるなら、正直言って、おまえでも慶人でもどちらでもいいんだが」

……本気か?おっさん。それでも実のオヤジか⁉︎

「紗香が親バカだからなー。おれも仕事が鬼のように忙しかったから、おまえの子育てもしてないし。せめて、罪滅ぼしとして、たとえ不本意であっても、おまえを推さないとなー。紗香に惚れて惚れて惚れ抜いて結婚した身だから辛いなー」

……どさくさに紛れてなに言ってやがる、おっさん。もしかして、この夫婦、大阪で「第二の新婚気分」を味わってんじゃねえだろうなっ。

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