常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

四歳下の蓉子のことは、慶人も大地もそれこそ生まれたときから知っている。

曽祖父が兄弟だったという、親戚といってもかなりの遠縁であるが、毎年正月に最高級ホテルで盛大に開かれる一族のパーティには、受験などよっぽどのことがない限りみんな参加させられた。

また、慶人・大地と蓉子の兄である太陽・海洋は、同じ名門私立の男子校出身の同級生である。

蓉子は幼い頃から飛び抜けた美貌の上に素直でまっすぐな性格であることも承知しているが、慶人も大地も、どうしても「妹」のようにしか見えないのだ。

だから、変に仲良くなりでもして「婚約者」に(まつ)り上げられては(たま)らないから、本店内でもなるべく関わらないように努めている。

だけど、理由(わけ)もわからず避けられる蓉子には、当然それがおもしろくない。


実は、蓉子を「妹」にしか見えないはずの彼らが追う「田中さん」は蓉子と同級生で、しかも早生まれのため、厳密にいうと蓉子よりさらに一歳下であるのだが。

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