常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

証券会社の人は酒に強くないとやっていけない、と言うが、蓉子も水島もかなりのピッチで呑んでいる。

「田中さん」が見る限り、二人ともビールを五杯ほど呑んでから……

ウォッカベースが好きな蓉子は、モスコミュール、スクリュードライバー、ソルティドッグ、バラライカと進んで、今は「お酒ばかりじゃなく野菜も摂らなきゃ」とブラッディメアリーを呑んでいる。

ジンベースが好みなのか、水島はジントニック、ギムレット、マティーニ、トムコリンズと進んで、今は「じゃあ、僕も野菜を摂ろうかな」とブラッディサムを呑んでいる。

「田中さん」自身は針葉樹林を呑んだあと、正面の棚にずらりと立ち並ぶボトルの中に、(はなは)だ異色の存在ではあったが「好物」を見つけたのでそれを頼んだら、やっぱりとってもおいしかった。
父親からは「酒のチャンポンは良くない」と口を酸っぱくして言われているため、以後はそればっかりをオーダーしていた。

もちろん、父の教えどおり、酒の肴もしっかり摂っている。ここのは、舌の肥えた「田中さん」が唸るほど美味(おい)しい。

特に、軽く焼いたフォカッチャの上に、オリーブオイルを軽く掛けたイベリコ豚の生ハムが乗っているのと、トマトソースをベースにしてモッツァレラチーズが乗っているのが気に入った。


ふと見ると、なぜか杉山がとってもうれしそうに、にこにこしている。

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