溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「目が合うなりすげぇ説教されて。まさか九条さんが知ってるとは思わないから、まじ意味わかんなかったですよ。だいたい上司にプライベートのことまで注意される筋合いないんですけど」
さっきの威勢はどこへやら。そう話す顔はやや引きつっている。よほど怖かったのか、懲りたのか。
まぁ、わからなくもない。私もよくあの強面で叱られるが、その度に生命の危機を感じるもん。
「ふふふ、ざまぁみろ」
腕組みをし、真壁くんのデスクに浅く腰掛ける女王様のようなユリさんが笑いながらそう言った。
「そのまま沈められたらよかったのよ」
「ゆ、ユリさん……。そんな真顔で怖いことを。冗談になりませんから。それに真壁くんも反省しているみたいだし、もういいじゃないですか」
これ以上話を掘り下げると、墓穴を掘ってしまいそうで無理やり話をまとめる。どうして九条さんに話したのか、なんて聞かれたら言い訳できる気がしない。