溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


真剣に考えていると、真壁くんがいつもの調子でな〜んてね、と言った。

「そんな期待したような顔をされたって、教えませんけどね」
「なっ、期待なんてしてないし!」

どうして私が期待をしなくちゃいけないのよ!それに聞かなくったって、どうせバカをからかうなとか、そんな風に言っていたに決まってる!

「西沢さん、いつの間にあの猛獣を手懐けたんですか?朝の九条さんの目はマジだったし、俺やられるかと思いました。 もしかしてヤッちゃったとか?」
「……っ!!」
「うわぁ! 超怪しい。顔まっ赤だし」
「ち、違う! 絶対ありえないから!」

不覚にも今朝の出来事を思い出してしまいうろたえる。

それでもないない!絶対ない!と必死に否定し続けるが、その間もどんどん顔が熱くなっていくのを感じる。これじゃイエスだと言っているのと同じ。現に真壁くんは愉快そうに笑っているし。

「はいはい。もうよくわかりました。昨日のプライベートの西沢さんちょっと可愛いかったし、本気で口説いてやろうと思ってたけど、もう諦めました。つーか、あんまり話しかけないでください。俺まだ死にたくないんで」

言いたいことだけ言うと、真壁くんは外部の音をシャットアウトするようにイヤホンをつけそっぽを向く。

「なっ、ちょっと!」

散々嗅ぎ回っておいてそれはないでしょ!最後まで否定させてよ!

どんだけ勝手なのよー!



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