溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
だけど人柄は明るくて、さっぱりとした大人の女性。もちろん、職業柄もあってとてもおしゃれだ。
「あ、カップ空だったね。おかわりいれるね。青葉ちゃん、次はハーブティでいい?」
千葉さんが私のマグカップを覗きこみ立ち上がる。
「えっと……はい」
「正直に言えよ。梅こぶ茶がいいって」
ずっと黙っていた九条さんが突如口を挟む。
「えっ? 梅こぶ茶? ごめん、さすがにそれは置いてないかなぁ」
そんな九条さんの発言を聞いて、千葉さんが困ったように首を傾げる。
「いえ! ハーブティで大丈夫です!」
慌ててそう言うと、千葉さんはオッケーと言って奥へと向かう。もう、九条さんめ。いたらないことを。気を使わせちゃったじゃない。
でも九条さんの言うように、ハーブティより梅こぶ茶が欲しいのが本音。さっきだしてもらったおしゃれなどこぞの有名な紅茶も、実を言うと無理やり喉に流し込んだ。どうやらおしゃれな飲み物は私には向かないらしい。
「青葉ちゃんて若いのに渋いものが好きなんだねぇ」
お盆に3つカップを乗せ、奥から戻ってきた千葉さんが可笑しそうに言う。
「えっと……はい」
「なんだか可愛いよね、青葉ちゃん。持ってる小物も、そのコンドームみたいな指サックも、最初見た時どこの事務のおばちゃんかと思ったもの」
思わずブハッとハーブティを吹き出しそうになった。愛らしい外見からは全く想像できないフレーズをいとも簡単に砲弾するんだもん。なんだかこの人もギャップがすごい。