溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「だれかれかまわず着いていくからそうなる。前にも忠告したはずだ。少しは自覚を持て」

ムッとした表情で私を見下ろし九条さんがそう言う。恐らく前に真壁くんと飲んで潰れてしまったことを言っているんだろう。

「でも、みんな同僚ですし」

おずおず言うと頭の上から、わからないやつだな、と怒鳴られた。その声にビクッと体がすくむ。

「そんな怒らなくても……」
「お前見てると本当イライラする」
「なっ、」

イライラって!? 九条さんの発言にカッと顔に血が集まるのを感じ、

「じゃあ構わなきゃいいじゃないですか」

思わず反論してしまった。そんな私を九条さんが無表情で見下ろす。それでも口はまるで誤作動でも起こしたように暴発し続ける。

「私がどうなろうと九条さんには関係ないじゃないですか」

朱音さんがいるくせに。今日二人で居たこと知っているんですよ。二人で消えて行ったあの後、どうなったんですか?喉元まで出かかったが、グッと飲み込む。

< 173 / 291 >

この作品をシェア

pagetop