溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

とはいえ、あれから九条さんとはまともに話をしていない。というより私が避けている。

オフィスでもあまり目を合わさないようにしているし、福々亭にも九条さんが来なさそうな時間に行ったり。きっと感じの悪い奴だと思われているだろう。それでもまたこの前みたいに感情をぶつけて嫌われるよりまし。

「実はこの前、しつこく京吾のとこに押しかけちゃって。それからもう電話にも出てくれないの。酷いと思わない?」

クスクスと笑いながらお盆にティーカップを乗せこっちに向かってくる朱音さん。

まさかあの修羅場を私が見ていたなんて思ってもいないだろう。騙しているようでなんだか心苦しくなる。
< 176 / 291 >

この作品をシェア

pagetop