溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「どうぞ、梅こぶ茶じゃなくてごめんね」
「い、いえ。ありがとうございます」

可愛いティーカップをそっと手に取ると、ピーチの甘い香りが鼻腔にスッと入ってきた。

「私バカだからさ、思い立ったらすぐ行動しなきゃ気が済まなくて。いつもそれで京吾に呆れられてる。ダメだよねぇ、いい年して自分の感情も制御できないなんてさ」

自嘲の笑みを浮かべ紅茶に口づける朱音さん。少し前まではわからなかったけど、今なら朱音さんの気持ちもわかる。

「すごいです。私はそんな風にできないので、ちょっと羨ましいです」
「え? もしかして青葉ちゃん、好きな人いるの?」

私がこんなことを言い出すことが意外だったのか、朱音さんは紅茶を飲む手を止め目を丸くして見据えている。

「……はい」

あなたと同じ人ですなんて口が裂けても言えないけど。

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