溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
みんなから遅れること数時間。人一倍仕事が遅い私は、キリのいいところまで終わらせ事務所を出た。
戸締りもした。鍵も閉めた、ガスも止めた。よし、と指差し確認しながらビルを出る。その瞬間、突風が私を襲った。ブワッと浮き上がる体。踏ん張っていないと転んでしまいそうなくらい風は強くなっていた。
オフィス街であるここもさすがに人気はなく。いるとすればテレビ中継をするリポーターや、カメラマンたちくらいで、完全にゴーストタウン化している。まだ平気平気と思っていたけど、すでにやばそうだ。
なんとか駅に着くと、そこは人で溢れかえっていた。押し込まれるように乗った電車内は、汗や香水の匂いが充満していてめまいがした。
あー、こんなことならユリさんたちと一緒に出るべきだったと、もみくちゃにされながら後悔していた。