溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「私、このゲーム大好きなんです! ありがとうございます! 一生大事にします」
「ははは、大げさだなぁ、青葉ちゃんは。でもそんなところに惚れたんだろうね、九条は」
茶化すようにそう言って井上がちらりと俺を見る。その視線に居心地の悪さを覚え、グラスビールを傾けそれを遮った。
「それにしても最初聞いたときは驚いたなぁ~。青葉ちゃんの好きな人が京吾で、しかも付き合いだしたなんて言いだすんだもん」
サマードレスに着替えた朱音がニヤニヤしながら俺と西沢を交互に見て言う。今日の主役だというのに、すでに顔は真っ赤で完全な酔っ払いだ。
しかもたちが悪いことに、西沢にもどんどん酒を進めている。そいつは飲めないからやめろと言っても全くきかない。
西沢も西沢で、この南国の雰囲気に酔いしれているのか、さっきから甘ったるそうなカクテルを楽しげに何杯も飲んでいる。
どうなってもしらないからな、と心の中でぼやいて、再び静かにグラスを傾けた。