溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「あの……私てっきり会社に乗せて行ってくれるのかと思ってました」
食べながら、なんとなくこの雰囲気ならいける気がして、恐る恐る視線だけ上げ、一番気がかりだったことを聞いてみる。
「だろうな。ここに来たときの挙動不振具合、凄かったし」
「普通そう思うでしょ。まさか上司の家に泊まるなんて思いもしないです」
「知ってたら全力で逃げただろ」
……ギクッとした。読まれてる。
「嫌なら今から追い出してやろうか」
「……っ」
そう言ってスプーン片手に頬杖をつく九条さんが、意地悪な視線を向ける。私は思わずふくれっ面で首を振った。こんな豪雨の中外に放り出されたら、それこそ死活問題だ!