溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「残念ながら会社のビルはもう閉鎖されてる。高速もだ」
なんだ、そうだったのか。
「お前、真壁んちに本気で行こうと思ってたのか? 」
「え? はい、そうですけど」
「その思考がどうかしてるよ。食われに行くようなもんだろ」
「そうですか……?」
真壁くんが私に手を出すなんて、ありえないと思うけど。九条さんの考えすぎじゃ……
「わかんないやつだな。なんかあってからじゃ文句言えないぞ?」
「でも、」
「とにかく、二度と変な真似すんな」
わかったな、とそう強く言われ、咄嗟にすみません!と肩をすくめながら謝った。なんだこの豹変ぶりは。さっきまで優しかったのに。だいたい真壁真壁言ってるけど、自分だって男じゃない。俺なら大丈夫って?
暫くどこか不機嫌そうにチャーハンを食べる九条さんを見ながら考えていた。
そしてそれもそうかと思った。女嫌いだったんだ、この人。恐らく真壁くんの言っていたことは本当だろう。この部屋も女の気配が全くしないし。