溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
鬼のヒーロー!?

散々無茶を言われ、なんとかリリースできるまでこぎつけたのは午後二時だった。

とりあえず一旦休憩しようと九条さんの言葉で、各々デスクを立ち始める。
私もグッと伸びをすると、福々亭に行こうと財布を携帯を手にとった。

朝からろくなものを食べてなくて疲労困ぱい。こんな時はおばちゃんのごはんが恋しくてたまらない。ごはんごはん、と鼻歌交じりにドアを開けた時。

「西沢、福々亭いくの?」

ユリさんに呼び止められた。

「はい、そうですけど」
「今日は無理かもよ。テレビであのお店近辺、床上浸水してるって言ってたから」
「えっ!? それ本当ですか?」
「テレビ中継でも出てたし」

そんな……。確かに昨日の雨はすごかった。それにここらへんに比べてあのお店近辺は地盤が低い。

おばちゃんは大丈夫だろうか。朝からテレビを見る暇もなかったし、そんな被害が出ているなんて全然知らなかった。
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