溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「お店もしばらくお休みね」
残念だけど、と言うおばちゃん。そんな落ち込むおばちゃんを見ていると、咄嗟に手伝います!と叫んでいた。
「そんな、いいから。仕事あるでしょ? それに明日には役所の人が来てくれるらしいから大丈夫よ」
「でも、一日でも早く取り除いた方がいいですよ。衛生的にもよくないし、明日になればこの泥は固くなってもっと大変なことになります」
数年前、実家が浸水した時もそうだった。匂いはきついし、固まった泥をどかすのは本当に大変で。まだ子供だったけど今も鮮明に覚えている。それにいつまでもこんな劣悪な環境にいてはきっと体調を崩してしまう。
「ありがとね、青葉ちゃん」
私の説得に納得してくれたのか、おばちゃんは申し訳なさそうに何度もありがとうありがとうと、頷いていた。